東工大AO入試の思い出と、受験生に向けてのアドバイス
現在は「総合型選抜」という名前になっているようですが、筆者はその前身にあたるAO入試で合格し、2019年度に東工大工学院に入学しました。筆者がAO入試を受験した際、特にAO入試関連の情報が非常に少なく、不安だった経験があるので、今回はAO入試がどんな感じであったかを振り返りつつ、これから東工大を目指す方々に向けてのアドバイスをしていけたらと思います。
注意 本ページはあくまで筆者の経験を基にしたものであり、最新の情報を反映したものではないことに注意してください。また、特にAO入試は試験結果の詳細が明確でない部分が多く、筆者の想像で語っている部分も多いため参考程度にご覧ください。
とにかく「謎」な試験内容
東工大のAO入試は、今は「総合型選抜」という名前に変わっていることからもわかるように試験内容が割と頻繁に変更されます。そもそも情報が少ないうえに内容が変更されるので一体どのような試験が行われるのか、よくわからないまま入試に挑むことになります。筆者が受験した際(2019年度)は
志望理由を提出させられるけどそれが評価に影響するのかはよくわからない
(人数が多いときは)センター試験で第1段階選抜を行うけど例年のボーダーが何点くらいなのかはよくわからない
試験は筆記と面接だけど出題内容がよく変更されるので対策が難しい
という感じで、とにかくわからにことだらけでした。というわけで、(2019年度の情報にはなりますが)それぞれが実際はどんな感じだったのかをまとめます。
志望理由
志望理由は出願時に専用の紙に手書きで提出させられました(写真はピッタリ800文字にした志願理由の下書き。修正を6回行ったことが分かる)。募集要項を見ても「筆記+面接で100点」としか書いていないのでこの志望理由が入試結果に影響するのかは正直よくわかりませんが、かといって適当に書くわけにもいきません。ということで筆者はPCで下書きを書き、高校の国語教師に繰り返し添削をしてもらいました。正直添削してもらうのは勇気が必要ですが、自分では気づかなかったことに気づけるので必ず第三者に見てもらいましょう。最終的に6回の校正を行い、無駄に指定された上限の文字数ぴったりにして提出しました。
内容は、過去に取り組んできたことを、嘘は書かずともちょっと大げさに表現するという方針で書きました。例えば、筆者の場合は単に既製品を組み合わせて太陽光発電をして遊んだ経験を太陽光発電システムを自作することでエネルギー問題の解決策を考えたという風にちょっと大げさな感じで書きました。でも、嘘はついてないのでOKです。
第1段階選抜
第1段階選抜はセンター試験900点満点の点数で機械的に評価されます。幸いにも東工大受験生はそこまでセンターの平均点が高くないこと、および筆者が 「センターは満点を目指すもの」というような非常に厳しい環境にいたことから900点中768点で第1段階選抜を通過。具体的にボーダーが何点なのかは謎なままです。
試験前日
結局、AO入試の対策はよくわかないまま試験前日に。筆者は兵庫県出身ですので前日から東京へ。元々は飛行機で速攻で行ってやろうと思っていたのですが朝から雪が降り、欠航となる可能性があるとのことだったので当日朝に新幹線へと急遽変更。ちょっと不安でしたが無事東京に到着。東京でも割と雪でが降っていたので、大井町のホテルの窓から降りしきる雪を見ながら不安な1日を過ごすことに。前日は「東工大のどこがいいの?」みたいな質問をされても答えられるように東工大について調べていました。まあ、結果的に意味はなかったですが。
筆記試験
そして迎えた試験当日、まずは筆記試験からです(写真は実際の筆記試験問題と計算用紙。ほとんど計算用紙を使わなかったことが分かる)。試験会場は西2・3号館(第1食堂前の古い建物)。試験問題は主に数学と物理。「ベクトルの内積が0なので直角です」というような、当たり前すぎて逆に迷うような問題も出題されたので冷静に考えて簡潔に説明を書くように心がければよいと思います。筆者はいかんせん理系が苦手なので一部わからない問題もありましたが、8割くらいは合っているかな、といった感じでした(詳細な点数は分からないので実際は不明)。平均点はかなり高いと思われるので、難しい問題を解く能力というよりもいかに冷静に、かつ理論的に説明できるかにかかっていると思います。
休憩時間
次は面接ですが、その前に昼休憩です。筆者は「今さら対策のしようがない」と言いながら本館の周りをぶらついていた結果、ウッドデッキが凍結していて思いっきり「滑り」ました。というわけで皆さんは座って静かに休憩しましょう。
面接試験
面接試験は石川台地区で行われたので、本館横から大移動です。試験官を先頭として小学生の遠足がごとく受験者みんなで移動しました。移動先で初めて面接の詳細が告げられます。具体的には、
- 最初の3分で自己アピール
- そのあと、問題が渡されるので7分で説明を考えて5分以内で説明
といった感じです。しかも、面接の順序も同時に発表されたのですが、筆者はなんと2番目でした。待ち時間が少ないので自己アピールを考える時間も少なかったですが、何とか落ち着いて話す内容をまとめました。
自己アピールは「堂々と」
センター試験でも緊張感が一切なかった筆者ですが、さすがに面接となると緊張しますが心を決めて試験室をノックし、入室。そこには仏頂面のオッサン一切笑わない試験官3人と、卓上にはデカいデジタル時計。そして微妙に離れたところに長机と椅子が1組置かれていました。大人3人に対して高校生1人、その空気感は一言で言うなら絶望です。
まずは自己アピールから、ということで3分間のタイマーがセットされました。心を無にして先ほど考えた自己アピールを発表します。ここで大事なのは謙遜や緊張という感情を捨て去り、自信をもって発表することです、当然ですが自身なさげな自己アピールはもはや「自己アピール」とは呼べませんから。筆者はうつむかないように必死で試験官のほうを見ながら、語尾は必ず「ですます調」ではっきりと言い切ることを徹底しました。その結果、時間が1分残りましたが気にせず自信満々に「以上です」と述べて強制終了させました。
また、自己アピールの発表内容はおおよそ志願理由と同じとし、「今まで何をしてきたか」「なぜ東工大に入りたいのか」という二点を主題に置きました。
問題の説明はやらかしても自信満々に
次に、試験官から問題とボールペンを手渡され、その問題につて7分間で説明を考え、5分以内でそれを説明します(写真は実際に手渡された東工大オリジナル3+1色ボールペン。ペンは持ち帰ることができるので記念品になる。)。問題は確か「磁場中に打ち出された電子の運動」といった、かなり基礎的なものでしたがとても冷静に考える余裕はありませんでした。後ろには模造紙が貼られており、そこに説明用の図を記入するのですが手が震えてまともにかけたものではありませんでした。そんな「問題の答えはあやふや」+「図もできていない」という絶望的な状況ですが、無情にも7分間はあっという間に過ぎていきます。
状況は最悪ですが、最善を尽くすしかありません。というわけで筆者はここでもとにかく自信満々に説明することを心がけました。具多的にはどんなに自信がなくてもはっきりと言い切ること、および正しいかどうかを一旦無視して必ず 「~なので~となると考えられます」というように理由を述べることを徹底しました。正直グダグダでしたが 「おそらく」といったあやふやなことは一度も言いませんでした。
受験勉強「以外」も大事
面接試験の後は一部屋に集められ、全員が終わるまで待機したのち終了となりました。正直「やらかしたな~」と思いながら帰路につき、一般入試に向けて学習を再開しましたが2日後の合格発表で無事合格。筆者の友人は大学合格時に嬉しさのあまり廊下の端から端まで全力疾走したとか言っていましたが、筆者は淡々と入学金を払いに行きました。
結局、筆者がなぜ合格できたのかは詳細な点数が公開されないので謎なままです。単に面接の順序が早かったので優遇されたという可能性だってあります。しかしながら、次の二つのことは受験生の皆さんにはっきりとアドバイスすることができます。
まず一つ目に、いわゆる「受験勉強」以外のことも重要ということです。特にAO入試のような試験では「単に成績がいい人」を求めているわけではありません。筆者の場合は半ば趣味で電気工事士や基本情報技術者といった国家資格を取得していたり、家の屋根に太陽光パネルを乗っけてみたりと様々な経験があったからこそ明確な志願理由を述べることができました。なので、特にこれから受験生になるという方には様々なことに挑戦してほしいです。まあ、筆者の場合は単に成績の低さを何とか補っただけとも言えますが(物理と数学は欠点だった)。
そして二つ目は面接で謙遜しても悪影響しかないということです。ついつい謙遜したくなりますが、当然ながら面接で自信なさげな人を採用したいとは誰も思わないでしょうから、面接にはとにかく自信を持って(あるいは自信があるように「繕って」)望みましょう。
LANDFALLについて
このブログは、東工大の学生サークル「LANDFALL」の部員が執筆しました。
LANDFALLは、学生のための情報冊子を作成しているサークルです。
主な制作物は、毎年新入生に配布している「TOKO WALKER」という冊子です。新入生が大学生活のスタートダッシュを切ることができればとの想いで制作しています。
また、LANDFALLは研究室紹介記事も作成しております。「LANDFALL」は研究室紹介冊子として1986年に創刊され、現在92号まで発行されています。オンラインで記事を公開しておりますので、ぜひご覧ください。
また、この記事を読んだ受験生の皆様が東工大に入学した際には、是非LANDFALLの部室にもお越しください。